おはようございます。
エモーションでは、お客様から何か良い音楽はないかとお尋ねされることがよくあります。
まぁカーオーディオ専門店ですから、本来であれば、びっくりするような高音質の音源をご紹介すべきなのでしょうが、
私はオーディオマニアであると同時に音楽マニアであることも自認しております。
そこで良い音源をお尋ねになられたお客様には、「どのような気分に浸られたいでしょうか」とお伺いし、そのお答えに基づいた音楽を色々とご紹介させていただいたりいたします。
お客様にいろんな音楽をお聞かせすると、意外とワールドミュージックが良いとおっしゃるお客様が多いことに気付きます。
これは面白い現象です。
タワーレコードなどのワールドミュージックコーナーに行くと、様々な国の様々なCDが置かれていますが、そのほとんどが世界各国で今流行っている歌ばかりです。言葉が違うだけで(英語ではないだけで)結構普通のポップスだったりします。
つまり一般的に洋楽とされているものは、アメリカやイギリスなどの英語圏の音楽であり、その他の国の音楽は、民謡もポップスもひっくるめて、ワールドミュージックと些か乱暴にくくられているだけのように見えます。
一方で、英語圏以外から発売されているポップスの中には、その国独自の旋律や”○○風”といった匂いのようなものを感じる事があります。おそらくJ-POPも、外国人が聴けば、そこに日本風の何らかの匂いを感じるんでしょうね。
その大本は、やはり民族音楽だと思います。
ワールドミュージックには、程度の違いはあれ、その国特有の旋律が含まれており、それを民族音楽と呼び、民族音楽の背景には文化や歴史などといった、長きに渡って育まれ、確立されたものが存在しています。
私の想像ですが、ワールドミュージックを聴いて感動するのは、隔絶された地域で育まれた文化であっても、その根底に流れる人間普遍の何かを感じ取り、共感しているのか、或は音楽を通じて異質な文化の片鱗に触れ、旅情気分を味わっているのか。
恐らくはその両方だと思います。
そこで、今日は、ワールドミュージックのいくつかをご紹介してみることにします。
まずはロシアから。
ロシア民謡は、60年代に学生運動の活動家を中心として、歌声喫茶などで流行りました。共産主義ソ連へのあこがれが、ロシア民謡を愛でるという方向へとつながったのだろうと思いますが、日本でよく歌われていたロシア民謡は、革命や共産党賛美の歌ではなく、庶民の生活や愛について歌ったものばかりでした。
「カチューシャ」や「トロイカ」、「ともしび」などといった歌は、学校でも習ったと思いますので、多くの人の耳に残っていると思います。また最近では、”女の子が戦車に乗って戦う部活”という、最初から破状必至の荒唐無稽なコンセプトで作られたアニメ、「ガールズパンツァー」でも、BGMに多く使われているようです(ちなみにうちの娘がはまっています)。
ロシア民謡は、民謡と名が付いていますが、実は19世紀末から今日に至るまでに歌われてきた流行歌で、民族の伝承歌と定義される民謡とは少し異なります。
日本でも活躍しているORIGAのポーリュシュカポーレです。
これは本当は軍歌で、赤軍の活躍を歌ったものです。
ドイツで大人気のシンガー、Helmut Lotty の歌うポーリュシュカポーレ、
このアレンジはかなりかっこいいと思います。映画のワンシーンのようです。
これは学校でも習う”カチューシャ” ダンサブルなアレンジが施されています。
軍服のおねぇさんがかっこいい。
私は共産主義とは真反対の考えを持っていますが、音楽の良さとはそういった主義主張を超えますね。
続いて、トルコの民族音楽を一つ。
トルコは、ヨーロッパに一番近いイスラム国家で、キリスト教徒との戦いに明け暮れた歴史を持ちます。領土を取ったり取られたりする中において、双方の文化が複雑にブレンドされ、民族音楽にもヨーロッパともアラブともつかない独自のものが芽生えたように思えます。
代表的なトルコの民族音楽は、”メフテル”と呼ばれる軍楽です。
オスマントルコ時代、軍楽とともに攻め入る残虐なトルコ兵は、ヨーロッパ人を恐怖のどん底に陥れました。
日本では1979年に放送されたNHKドラマ”阿修羅のごとく”のテーマ曲となった「Ceddin Deden,ジェッディンデデン(祖父も父も)」という曲が有名で、45歳以上の方は聞き覚えがおありかもしれませんね。
ジェッディンデデン
余談ですが、アメリカのアリゾナに研修で行ったとき、ステーキが食いたくなって飛び乗ったタクシーの運転手がトルコ人で、この曲の話で盛り上がったことがあります。運転手は元トルコ陸軍兵士で、兵舎では毎朝この曲で起こされると話していました。この動画で太鼓をたたいている人、漫画に出てきそうなトルコ人です。
トルコのロックバンド Zafer Isleyen が演奏するジェッディンデデン
民俗音楽はやりようによってかなりかっこよくなります。
続いてヨーロッパから一つご紹介します。
ヨーロッパの古い音楽は古楽と呼び、中世・ルネサンス期の音楽ということでクラシックに位置づけされますが、
古楽には「宗教音楽」「宮廷音楽」「世俗音楽」の三種に分類されます。
宗教音楽と宮廷音楽は、その後、我々がイメージするいわゆるクラシック音楽の系譜へと引き継がれますが、世俗音楽は完全な民俗音楽で、この旋律やリズムが、のちのポップスやロックに受け継がれていくことは想像に難くありません。
ご紹介するのは14世紀の世俗音楽、作者不詳の名曲、「サルタレロ」です。
サルタレロは曲名ではなく、中世イタリアで流行った舞曲の形態であり、一口にサルタレロといっても様々な曲があります。
その中に有名なものが一曲あり、古楽奏者はもとより、ロック系アーティストなどによっても演奏され、きわめてマイナーながら、知名度のあるサルタレロが存在します。
先ずは古楽演奏家によるサルタレロ、オリジナル性の高い演奏です。
90年代に人気絶頂だった暗黒音楽のユニット Dead Can Dance による演奏、
因みにDead Can Dance の女性の方、リサ・ジェラルドは、Dead Can Dance解散後、ソリストとなり、
アカデミー賞受賞映画「グラディエーター」の音楽や、NHK大河ドラマ「龍馬伝」のOPなどを手がけました。
Corvus Corax というドイツのグループが演奏するサルタレロ、彼らは日本では完膚なきまでに無名ですが、ヨーロッパでは大きなホールを満杯にできる実力者です。
まるでロックコンサートのようなノリで演奏していますし、観客もそのほとんどがヘビメタファン。
しかしCorvus Corax は古楽器を演奏する純然たる古楽演奏家です。
サルタレロ、めちゃくちゃかっこいいと思いませんか?
さて、ほんの少ししかご紹介しておりませんが、この中から好きになっていただける音楽があれば幸いです。
ワールドミュージックって意外に名曲の宝庫だったりします。
稀に日本に紹介されて大ヒットしたりもしますが、そのほとんどが輸入盤でしか入手できないものばかり、つまり本格的にプロモーションされないために、認知度が低いだけなのだと思います。
今回は少しオーディオから離れた内容でしたが、オーディオはそもそも音楽を聴くための装置。良い音楽と同伴でなければ意味がありません。また折を見て、いろんな音楽をご紹介していきたいと思います。
(でも”イイね”の数が少ないようでしたらやめときます)
エモ親方